既存建物の利用価値と耐震性の向上を促す総合的な再生手法の研究

 昨今、地球環境への負荷や居住環境の持続的な運営という観点から、既存建物をできるだけ有効に活用しながら、都市や地域の風景を美しく保ち、生活空間としての豊かさを創上げる技術が求められている。一方で既存建物の耐震性能に関しては、19951月に起きた兵庫県南部地震を教訓として施行されたいわゆる「耐震改修促進法」(199510月制定)や、その後の「改正耐震改修促進法」(20061月施行)の後押しにもかかわらず、耐震改修が果果しく進んでいない現状がある。これらの問題を解決するためには、二つの側面からの取組みが必要である。第一に、既存建物の利用価値の向上を促すための、用途変更を含んだ機能性や美観と、それによる建築空間の有効な活用等である。第二に、耐震性の向上を促すための、構造技術としての安全性、経済性、施工性等である。この両者が巧みに融合された時、建物の改修の可能性は大きく広がると考えられる。但し、この二つの側面からの取組みは相矛盾しやすい性質を帯びている。

 そこで、本研究は、建物やそれらで構成される都市空間の耐震性能を確保しつつ新たなデザインを施すことで、建物の経済価値・利用価値や都市空間の豊かさを高める方法、いわば建物の「再生手法」を広く社会に提示することを目的とした。具体的には、これまでの関連する研究成果や先行事例を横断的に検証した上で、複数の判断基準から総合的に高く評価される建物の再生手法を提示することである。